はじめにお断りしておきたいのですが、私は事件の容疑者と彼の行動を正当化したいと考えている訳ではありません。以下、これを踏まえて読んで下さい。
ある報道がされてから、自分の中で消化できないことがあります。
朝テレビを観ていたら、広島の女児殺害事件のペルー人容疑者に関して、容疑者に接見した弁護士(以下、K弁護士)が事件の経緯をこと細やかに公表していました。突然現れたK弁護士が主役となり、(私の記憶では)前日逮捕された時にマスコミからインタビューされていた弁護士は役割を終えたのか、横に立っているだけでした。
K弁護士の映像だけが編集され放送された可能性もあるけど、私が違和感を感じてならなかったのは、K弁護士の発表が、従来の弁護士の発表と違い、容疑者を不利にし、しかも国民が容疑者に対して更なる憎悪を増す方向へ導く内容であったことです。
私の認識では、弁護士は容疑者を不利な立場に導くものではないのですが、放送を見た限り、警察発表以前に弁護士が容疑者を自白させ、地獄へと陥れた印象を受るものでしかなく、K弁護士からは容疑者を弁護する姿勢を全く感じることができませんでした。
これに関しては、番組に出演していた元検事の方も、K弁護士に公表に関して疑問を提起していましたので、個人的には怒りを抑えることができてよかったのですけど...。
またマスコミによる容疑者の近親者等に関する扱い方にも、納得できずにいます。
例えば、日本人が犯人の場合、容疑者の母親や兄の映像を放送することはほとんどないと思うのですけど、今回の事件では日本で生活している兄のインタビュー模様を放送した内容に、差別や不公正、不平等を感じたのは私だけでしょうか。
兄は日本で生活しているのですから、日本で生活をする限り暴力を受ける可能性があり、二次犯罪を生むことにもつながりかねません。母親はペルーに在住しているから問題ないと考えたのか、母親の映像付のインタビューを放送したことはマスコミの暴力ではないでしょうか。
兄へのインタビューは全てスペイン語でされていました。事前に兄の了承を得て映像を公開したのか、言葉が理解できない状況で了承をしてしまったのかは分かりませんが、いずれにしても日本人であれば被害者もしくは犯罪者本人以外の近親者の映像を公開することは稀であり、今回の事件に関する近親者の扱い、報道はありえないと思うのです。
こんなことを考えるのは、私がメキシコで生活を始めて間もない頃、事故に巻き込まれ、警官に状況を説明をしたくてもスペイン語で伝えることができず、知人の助けを借りて何とか状況を説明し、事故の相手と交渉をすることができたためです。それ以降、メキシコでは理由もなく尋問されることは少なくないため、もし検問などで警官に尋問されたらどうすればよいのだろうと心配をしていた時期もありました。実際、裁判で言葉が通じないため不利な状況に置かれた日本人のことも聞いたことがあります。
言葉が通じない状況がいかに心細いものであるかを知る私は、さらに(外国人全てが英語を話せる訳ではないのに)強引に英語でインタビューをする報道関係者の映像を見て、正直「心」のなさを感じました。警察には、スペイン語をきちんと身に着けたプロの通訳をつけた上で事件解明にあたって欲しいと切に願います。
最後に、テレビでは容疑者のアパート前から今回の事件を報道されることも多いのですが、報道関係者は地元の方々の生活(環境)を考慮して報道すべきです。事件の報道も大切ですが、朝の通勤、通学の時間帯に、狭い道に立っているレポーターの横をギリギリの間隔で通り過ぎる自転車や歩行者が映される度に、事件とは全く関係のない地元の方々の生活を蔑ろにしているとしか思えないのです。